【易占・お悩み相談門塾】恋愛、結婚、出産、子育て――女性としての堅実な道。離婚の文字が浮かんだ理由は、夫の過去の二度の浮気。将来の可能性を覗くツールとして、古代中国の王たちが編み出した卜占(ぼくせん)・易(えき)。
夫は今も浮気をしているのか。離婚後の人生はなにが待っているのか。
日々見舞われる数々の選択。常に一つの道にしか立つことのできない人生。あなたが不安や疑問をくぐり抜ける門を、ここに開設いたします。
今回の夫の浮気に悩むご相談者様
今回のご相談者、マヤさん(仮名)33歳。5歳年上の夫と、小学生の2人のお子さんとの4人家族。
夫は技術職として工場勤務。仕事熱心で柔和な雰囲気に惹かれて結婚。今年、夫婦となって10年目ということで、周囲から「早いものだね」と祝福の言葉もあったばかりだというのに、彼女は時折離婚を考えることもあるそう。
原因は、結婚直後に発覚した浮気と、2人目の妊娠時にも再びという夫の手酷い裏切り。
夫はシフト制で、土日休みのパート勤務であるマヤさんと休日もずれることから、行動が掴みづらいところもあり、
「本当はわかっている二度だけでなく、他もあったのかも」
「今現在も進行中だったら」
と、多忙な子育ての合間にも強い疑念に襲われることが少なからずあるということです。
子どものことを考え過去はなんとか踏みとどまった離婚について、易占にて道を探ってみたいと思います。
易占についてのご説明
ご相談に取りかかる前に、易占(えきせん)とは一体どういうものなのか、軽くご紹介します。
現在、易といえば、大方はこの二つ「周易(しゅうえき)」か「断易(だんえき)」による卜占のことでしょう。
※卜(ぼく)とは、物質などに偶然表れた変化から運命を読む占い全般のこと。
今回使わせて頂きますのは周易の方で、中国の殷・周の時代(紀元前1100年前後頃~紀元前256年)にはすでに元となる占いが行われていたことが遺跡によりわかっているそうです。
よく聞かれる【八卦】(はっか・はっけ)は、万物の誕生の源である宇宙の気、陰陽五行から成立した記号のようなもので、これを二つ重ねた六十四卦(ろくじゅうしか)が主体となります。
六十四卦はすべて「革命」「訴訟」などといったある特徴・主題を持った時間とそれぞれの徳行があり、加えて、周時代の王が書いたとされる占断のための文章(卦辞・爻辞)も外せないものです。そのすべては「易経(えききょう)」という古書に記されています。
断易の方は六十四卦は用いるものの、学問的な意味よりも爻(こう:後ほど解説)に割り振られた干支や六親により推理するという方術に重きが置かれ、同じ易でありながらまったく別物といった感覚さえあります。
易の実践
筒に入った細長い箸のようなものをまず思い浮かべる方もおられると思います。筮竹(ぜいちく)と言われるものですが、数を数えるために用意されています。
易占は、数霊(すうれい・かずたま)により占うので、実はいうと【数字】か【数えられるもの】さえあれば、どんなものも使用できます。
とはいっても、道具にも霊(たましい)が宿るとされるので、一人の占術家が気まぐれにあれこれ道具を変えたりというのはあまり歓迎されていません。
メジャーな道具としては、筮竹、サイコロ、コインなどです。
八卦の表
八面サイコロがあれば一番早いでしょうか。2回振って、「7」が出たら「艮」が内卦(下)、次に「3」が出たら「離」が外卦(上)となり、
得卦(とくか:得られた六十四卦)は「火山旅(かざん・りょ)」というわけです。あとは、この卦が出している答えを探っていく作業となります。
基本は陰と陽の2種類で、構成単位である一本一本の横棒のことを爻(こう)と呼びます。
もし爻辞(それぞれの爻の状態を例話などを用いて解説した短い文章)も参考にしたいならば、四角形のサイコロを使って1~6までの数字を出して、それを得爻とすればいいでしょう。
筮竹の場合は適当に掴んだ本数により(本来は深い意味に基づいたやり方があります)、コインであれば、コイントスなどで裏表を出し、これを陰陽として六回出せば卦が作れます。
六十四卦すべてのご紹介は今回は省略します。本来、周易をやるならば易経を読み込み、易学について修めることが絶対条件と言っていいです。
ただ、かなり専門的な深い学問です。六十四種類の卦をすべて、名前から意味まで記憶するというだけでもかなりの日数を要するでしょう。
384種類もある爻辞まで暗唱可能な易者もいますが、これは経験というか、毎日卦を立てていたら自然に記憶に収まっていくところもあり、やはり年月が刻んでくれるという感じです。
インターネットサイトでは、クリックするだけで六十四卦が選択・表示され、解説もあるので、道具や易の教本を持っていなくても手軽に占えます。
自分で占ってみたい方は、それらを使って卦を立てるのもいいでしょう。
よりよい易占のための最低限のルール
タロットカードと同じですが、気に入る結果になるまで何度も占ったりしない――など、基本の約束事はあります。
ただ、周易による占断は、深遠さ、難解さ、曖昧さが信条というような言葉による判断となりますので、ほぼ直観に頼らねばならないという辛さ、危うさもあるのです。
初心者の方へのおすすめは、まずはサイトを使っておみくじのように端的に吉凶を出すことからはじめることと、わからなくなったら思いきってやめてしまい、また日を改めたり、質問の仕方を変えたりして占うことです。
もちろん、他人に危害を加えたり不利益に陥れるような質問もしてはいけないとされています。
これらは通常の倫理観でわかることですので、言うまでもないかもしれませんが。
では、相談者マヤさんから頂いた質問について、卦を立てていきます。
占者によってやり方も多種多様です。ここで行う占断で知っておいてほしい用語はこちらです。
得卦に最もウエイトを置きましょう。六十四卦の意味に加え、卦辞や各爻辞も答えを深めてくれます(八卦も当然考慮しますが、そもそも六十四卦の意味自体が、重なった八卦の関係性から導き出されています)。
卦爻の陰陽も無視しません。
陽は吉相、力強さ、明るいものとして見ます。性別は男性です。そのエネルギーは天へ向かって上昇するとします。
陰は凶相、軟弱なもの、暗いもの、性別は女性と見ます。そのエネルギーは地へ向かって下降するとします。
赤い丸印は得爻です(この場合、五爻)。通常、得爻が質問者本人や占った事柄の立ち位置を表します。
六本の爻は緑の矢印のとおり、下から順に数えます。
よって、下から上へ時間が流れていると思ってください。
初爻~上爻まで、頭についている「九」という数字は陽爻であることを示し、「六」は陰爻です。
九二などと、数字が二つ並んでしまいややこしいですが、通常このような書き方をします(一番下の爻がもし陰なら、初六と呼びます)。
爻も位を持っていて、最も良いとされるのが五爻です。次に良いとされるのが五爻と対応関係にある二爻です。
ただこれも陰陽やらの関連上変わるものなので、五爻が常に安泰というふうに決めつけはしません。初爻と四爻、二爻と五爻、三爻と上爻が対応関係にあります。
「之卦」(しか・いくか)――得卦からの展開を表します。
得爻の陰陽のみを逆にして得る卦のことです。私の場合、占った結果が凶相であるときに、吉へと転じさせるための対策として用いることがほとんどです。
今回はほぼすべてに之卦を出し参考にしています。この之卦をあえて出さずに、対策を見るための卦をもう一つ出すやり方もあります。
「裏卦」(りか・うらか)――得卦の爻をすべて陰陽逆にして得る卦のことで、得卦の以前の状態、過去を見るときに使います。普段はそこまで重要視しません。
相談001 マヤさん・33歳女性
問一 旦那の浮気は現在もあるでしょうか?
得卦は「風地観(ふうち・かん)」、得爻は六三。
観卦は「仰ぎ見る」の意。三爻は夫の現在の状態・心持ちを表していると思われます。
爻辞の意味は、「下位の者とはいえ順応の徳があり、身を顧みて、自ら進むか留まるか決めるものである」。
政治を行っている上(かみ)の姿を民衆が感服して見ている姿を表しているとされる卦ですが、夫が見ているのはもちろん会社の上司などではないでしょう。六爻全体を俯瞰すると「艮」卦の形に似ているので、「止まる」という意味にも解します。
裏卦も出していて、これは現在の卦に至るまでの過去。
マヤさんが知る裏切りは過去2回。その夫の過去が「雷天大壮(らいてん・だいそう)」ですね。恐らくその浮気は、若気の至りのような、欲望を持て余しての暴走だった。
また、之卦(未来の示唆)が「風山漸(ふうざん・ぜん)」。
女性が順序を踏み嫁いでゆく姿、功名へと一歩一歩進む過程を表した卦で、徐々に進んでいく、なんて、まるで現在は止まっている浮気の虫がまた動き出すかのように思えますが、観卦も漸卦も、風教が行き渡るという文言が載り、どちらかというと吉相として受け止められることが多い卦です。
外卦・風(巽)は、「素直」「随う(したがう)」という意味。
つまりは、年齢を少し重ねて性的欲望が収まりつつあり、あたかも教化されたような心に従っている状態ではないでしょうか。
もしこの外卦をマヤさんとするならば、夫は表面上は穏やかでいてくれる妻の姿を見て、歩み寄ろうかどうしようかと思っているところ。やがては歩み寄る可能性が大。
占断:
現在、夫の浮気はどうやらやんでいる様子。とは言っても、年齢の作用からか欲が沈静しているからであり、様子を見て行動しようという強かさも感じられ、いまだはっきりしない。しかし、今後さらに年を取っていったら、浮気の虫はきちんと収まっていくことがわかる。
問二 離婚は本当にした方がいいでしょうか?
得卦は「水地比(すいち・ひ)」、得爻は六二。
浮気が収まるとあればもう一度信用してみるという道もありそうですが……。
問一で、夫がぼんやり静かになった自らの世界を見ていたように、マヤさんも違う視線でご自身の将来を見据えていたようです。
比卦の意は「親しむ」。
二爻の辞は「自分が親しむべき相手がよくわかっていて、正しく求めていくという、志を失わない者」。
これはマヤさんのことで、二爻の周り、陰爻に埋もれる姿は現在の夫との陰鬱な生活か。そこではなく、本来自分が居るべき正しい将来(唯一の陽爻で尊位である五爻)を見ています。
また卦辞に「遅れてくる者は機を逸する(親しめない)」という文言もありますので、決断を急ぐ気持ちも芽生えているよう。恐らく、占いの手を借りようと考えたのも、ずっと前から離婚を九分九厘決めていたからではないでしょうか。
ではどうして踏み切れなかったのか。
之卦を見れば一目瞭然でした。「困難」を象徴する坎卦が重なる「坎為水(かんいすい)」。
二爻は有能ではありますが、五爻などに比べるとまだまだ経験・実力不足。
世間の噂で聞いている程度の青写真でしかない離婚。もしそこへ飛び込むとしたら苦しい生活が待っている――これが彼女が決断できなかった理由。
占断:
あなたは自分の将来をしっかりと見据えています。離婚して新しい生活へ向かうことが自分にとって正しい、というのが、あなたの中の答えのようです。ご苦労も想像できますし、覚悟もなさっているよう。ご自身で決断を出されて大丈夫です。
問三 離婚するならいつ頃がいいでしょうか?
得卦は「天沢履(てんたく・り)」、得爻六三。
年月日を卦により得ることはできなくはないです。例えば、卦に五行を見て、木なら春と見たり、六三を月として数えて9月としたり。
ただ今回は、あくまで周易的な方法論で見ていくことにします。
履卦は「従順な態度があれば、危険に遭うことなく物事を踏み行える」。そして三爻は「よく見えない目で見、病気の足で行こうとすれば地雷を踏むことになる。剛情な者の無理のある振る舞いである」。
外卦は「天(乾)」。完全な、堅固な、という意味があります。易経ではこの相手を「虎」に例えて、怒らせたり噛みつかれたりせずに上手に相手をする方法を説いています。
占断:
問二でわかったとおり、マヤさんは新しい人生へ早く向かいたいと急ぐ気持ちがあるようです。しかし強引に進むことへの凶相が表れています。これ以上ないという完璧な準備を整えてからの実行がいい。
問四 どういう離婚の形がベストですか?
得卦は「山水蒙(さんすい・もう)」、得爻は上九。
マヤさんは、夫の浮気が今もあって、証拠を掴んだ方がいいなら探偵に頼ることも考えていたそうです。しかしここまでの占果を見る限りその必要はなさそう。
蒙卦は「無知無学というのは、前が見えない暗く険しい道を行くようなもの、教え導いてくれる教師を自ら求めれば、切り拓くことができる」という意味。
初爻はその卦が象徴する状態の始まりや未熟者を表し、上爻は時間の終端で、やがて消え入り変化が目前であることや、分を越えてしまった亡者などを表します。
爻辞はその「この上なく蒙昧(もうまい)である者を厳しく正し、乱れを防いでやること。適度な厳しさであれば教師の徳は失われないし、無知な者も素直に従い護られる」。
之卦の「地水師(ちすい・し)」も人々をまとめる軍師・老師を示しています。二人をよく知る人生経験豊富な年長者が近くにいるのでしょう。
弁護士か、仲人を務めた方か、どちらかのご両親か、それはわかりませんが、夫の不貞が離婚の選択を招いたのは間違いありません。
きちんと面詰(めんきつ)できる人に冷水のような目覚めの言葉を投げてもらえば、夫は長く放棄してきた「罪を認め謝罪すること」を、素直に行う可能性が大です。
占断:
二人だけで苦しい決断をする、というより、経験豊富で思慮深い年長者に間に入ってもらい、話し合いを進めていくことがベスト。
夫の不貞行為を第三者から問いただすことも必要かもしれない。夫はおとなしく従うしかない、という感じになりそうです。
問五 離婚後の将来はどうなりますか?
得卦は「沢風大過(たくふう・たいか)」、得爻九二。
一番気になるのがこの質問でしょう。大過卦は、上下のうつろな陰爻が中身の詰まった四本の陽爻を抑えていて見た目はらはら、危なっかしげなんですが、意外や吉相として説かれることが多い。
これを彖伝(たんでん)では「大過の時間は大いなるかな」と謳っています。
「思わず棟木(むなぎ)がたわんでしまうような行き過ぎた行為があったとしても、それにより世が治っていくのなら崩壊には至らず喜びがある」。
その喜びとはまさしく二爻で「老夫が若い婦人を得て子を授かる」。
将来、パートナーを得られるということなのでしょう。相手が年下の男性になるかはわかりません。
マヤさんもまだ三十代ですから、新しい夫との間に子どもを得る可能性も考えられます。
之卦も「沢山咸(たくざん・かん)」。これもまさに男女の性的感応を表し、場合によっては凶相として捉える慎重さが必要ですが、得卦ではないので注意喚起に及ばずでいいでしょう。もしそれが問題というなら、これが得卦になっているはずだからです。
自ら動いていって通じ合うことも描かれている卦。というより、自然の成り行きで出会い、ぴったり符合する相手ということかも。そういう意味の之卦と判断。
将来の不安となると、経済的なことや二人のお子さんのことかと思われますが、もしかすると、マヤさんが問二で見ていたのは、女性としての幸せだったのかもしれませんね。
再婚の可能性があるなら、そこからの生活は経済的にも少し余裕が持てるようになるでしょう。深読みして、恋愛ではなく仕事のパートナーと見てもいいですが、その場合も大いに発奮して、新しいものを生み出すという喜びがありそうです。
占断:
新たなパートナーが現れそうです。マヤさんには子どももいて、この恋は周囲から見ても大きな決断と驚かれるような大胆さが含まれている予感がありますが、新しい世界を作っていくためには必要なもの。そこにはきっと多くの喜びがあります。
まとめ
以上が今回の占断になります。
ここまでご覧になられて、離婚のような人生にとって大きな出来事を占いで決めていいものなのかと、疑問を持たれた諸氏もおられますでしょう。
基本的には、道義的に尋ねてもいい、とご本人が思える場合は、何を占っても問題はありません。
今回のように、良い結果ばかり導き出されるものではありませんから、受け入れ難い結果もあることを承知の上で行う必要はあります。
私自身、易という方術を手にしていても、自分の人生の大事な決断はあえて占いませんし、取るに足らない内容の質問でさえ、うまく占えないときもあります。
卜が最も面白いところ、それは「自然であること」ではないでしょうか。
自然はただそこにあって、終始無言で呼吸しているように思えます。友人のように親しみを感じられることもあれば、災害など、単なる暴力としか思えないときもあります。
自分の脳で操作できないものに対する好奇心と畏敬。これが卜を支える柱です。
その壮麗な柱にかかっている屋根が、すべての災難から私たちを保護してくれるわけではありませんが、粛然と向き合いたいという気持ちになられたときは、また触れに来て頂ければと思う次第です。
あなたの問いに卦を立てる機会がもしあれば、私もその問いに真摯に向き合い、易占を使わせて頂きたいと存じます。